みなさん、サイテスという言葉はご存知でしょうか。
サイテスは希少生物を保護するための国際条約で、日本国内ではワシントン条約という名の方が知られているかもしれません。
ニュースでしばしば密輸事件が報道されていますが、あれはサイテスで輸出入が規制されている動物を、所定の手続きを経ずに輸入しているため摘発を受けたものです。(7月12日 トカゲ19匹を旅行カバンに詰め込んで……爬虫類密輸の“闇バイト”で逮捕された27歳OLの末路)
残念なことに日本はペットの密輸大国なのです。
買い手である我々飼育者こそ、規制の内容を理解しておかねばなりません。とはいえ、サイテスに関する詳しい知識を持っている人は少数派かと思います。
そこで、今回は復習もかねてサイテスについての知識をまとめます。一緒に勉強していきましょう。
- サイテスって何?
- どんな動物が規制されているの?
- 違反するとどうなるの?
- 密輸かどうか見分ける内容はある?
こんな内容をご紹介していきます。
サイテスとは
サイテスは、正式名称を
Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)
といい、それぞれのアルファベットの頭文字をとってCITES(サイテス)と呼ばれています。
1973年にワシントンで採択されたことから、日本国内ではワシントン条約という別名がついています。
ワシントン条約の取り決めは、個体数が減少している動植物の輸出入を制限し、各国の生態系をお互いに保護していこうというもの。
規制の対象は生体だけでなく、象牙やワニ革のカバン、キャビア缶といった加工品も含まれています。
サイテスの三種類の規制
サイテスで輸出入が規制される動植物は、個体数や生息状況など様々な要因から3つのランクに分類されており、それぞれ段階ごとに附属書と呼ばれるリストに掲載されています。
規制の厳しい順に附属書Ⅰ〜附属書Ⅲまであり、繁殖方法が確立されていない場合ランクが上がると流通量も減少するため、どの附属書に名前があるかは生体の価格にダイレクトに反映されるポイントとなっています。
附属書Ⅰ
国際取引における影響を強く受けており、その中でも特に絶滅が危惧される種が掲載されます。
原則商取引は禁止されています。
附属書Ⅱ
国際取引を規制することにより保護が必要とされる種が掲載されます。
国際取引自体は可能ですが、商業目的で輸出するには輸出国の担当部局が発行した輸出許可証が必要となります。
附属書Ⅲ
条約参加国が自国内の生態系を保護するため、他の参加国に規制の協力を求めている種が掲載されます。
国際取引は可能ですが、商業目的で輸出するには輸出国の担当部局が発行した輸出許可証か、原産地証明書が必要となります。
参考: wiki 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約
サイテスの対象となっている動物達
サイテスの対象となっている種は非常に多く、爬虫類ショップであれば普通に販売している種でもⅢ類やⅡ類に登録されていることがあります。
対象動物は数多く存在しますので、ここではそのうちのごく一部だけご紹介します。
サイテスで国際間取引が規制されている爬虫類・両生類(一部)
| 附属書Ⅰ類 | 附属書Ⅱ類 | 附属書Ⅲ類 | |
|---|---|---|---|
| トカゲ | フィジーイグアナ属全 コモドオオトカゲ ベンガルオオトカゲ |
トゲオアガマ属全種 ヨロイトカゲ属全種 ソロモンオマキトカゲ |
– |
| ヤモリ | アオマルメヤモリ | ヒルヤモリ属全種 ヘラオヤモリ属全種 |
コモチヤモリ属全種 |
| カメレオン | ロゼッタヒメカメレオン(ロゼッタカメレオン) | カメレオン属全種 コノハカメレオン(フトオカメレオン)属全種(Ⅰ類掲載種を除く) |
– |
| ヘビ | ボアコンストリクター | インドコブラ ケニアブッシュバイパー |
インドオリーブヘビ ミナミガラガラ |
| カメ | オオアタマガメ属全種 | キボシイシガメ リュウキュウヤマガメ リクガメ科全種 |
チズガメ属全種 フロリダスッポン |
| ワニ | ナイルワニ シャムワニ イリエワニ インドガビアル ヨウスコウワニ アパポリスカイマン |
– | – |
| イモリ | カイザーツエイモリ | ホンコンイモリ | アルジェリアサラマンダー |
| サンショウウオ | オオサンショウウオ属全種 | メキシコサンショウウオ(アホロートル) | ヘルベンダー |
| カエル | コウチヒキガエル属全種 | アメエレガ属全種 ヤドクガエル属全種 |
ヘルメットガエル |
表に登場した種の他にも、多数の動物が附属書に掲載されています。
詳細な内容は以下の資料をご確認ください
経済産業省|附属書対象種一覧
2019年1月13日時点版(爬虫類は64ページ、両生類は86ページから)
条約に違反し密輸した場合の罰則
では、サイテスに違反し、所定の手続きを踏まずに動植物を輸入した場合はどういった罰則があるのでしょうか。
日本には、国内外の希少生物とその生態系を保護する目的で「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)が制定されています。
サイテスの附属書に載っている海外産の動植物は、この法律に基づいて輸出入の規制が実施されています。
種の保存法に違反した場合の罰則は以下の通りです。
| 違反内容 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 譲渡 捕獲 輸出・輸入 | 5年以下の懲役 又は500万円以下の罰金 |
1億円以下の罰金 |
| 陳列 広告 | 1年以下の懲役 又は100万円以下の罰金 |
2,000万円以下の罰金 |
参考:環境省|種の保存法の概要
参考:政府広報オンライン|希少な野生動物を守る「種の保存法」
売られている個体がサイテス違反かどうか見分ける方法はあるのか
附属書I類に名前のある種は、原則として商用流通は禁止されています。
しかし、以下の要件のどれかに当てはまる場合に限り、申請をおこない国際希少野生動植物種登録票(登録票)を交付することで販売が可能となります。
- 規制適用日後に国内で繁殖した個体
- 国内において規制適用日前に取得された個体
- 関税法に基づいて輸入された個体
例えば、まだ附属書Ⅱ類に名前があった頃に日本に輸入された個体が、Ⅰ類に上がったのちに産んだ子などが該当します。
こういった場合も登録票の交付が必要となりますので、附属書Ⅰ類に名前があるにも関わらず、登録票なしで販売されている場合は密輸を疑うべきでしょう。
参考:一般社団法人 自然環境研究センター|国際希少種登録 手続きの概要
ワシントン条約第18回締約国会議について
2019年8月17日〜28日にスイスのジェネーブで第18回ワシントン条約締約国会議が開催される予定です。(第18回ワシントン条約締約国会議は2019年5月〜6月にかけてスリランカで開催予定される予定でした。しかしテロの影響で延期となり、開催場所も変更されています。)
第18回ワシントン条約締約国会議に向けて、爬虫類・両生類についての掲載要望書がWWFジャパンから環境省に提出されているためここで紹介をしたいと思います。
日本に生息する爬虫類・両生類の附属書Ⅲ掲載要望
要望が出されているのは南西諸島の下記トカゲモドキ属6種とミヤコカナヘビ・イボイモリです。
- クロイワトカゲモドキ
- マダラトカゲモドキ
- ケラマトカゲモドキ
- オビトカゲモドキ
- イヘヤトカゲモドキ
- クメトカゲモドキ
- ミヤコカナヘビ
- イボイモリ
参考 : 南西諸島固有の爬虫類及び両生類のワシントン条約附属書III掲載に関する要望書
ワシントン条約掲載要請の理由
掲載要望のあった8種は国内や自治体の条例で保護されています。
しかしながら、国際的な制限がないために国内ではなく海外へ輸出・密輸されて取引が行われています。
他国のトカゲモドキ属とイボイモリ属に関しては、附属書Ⅱ掲載提案が出されています。
が、日本に生息するトカゲモドキ属とイボイモリ属だけ除外されているので、需要の上昇による密猟・密輸の危険性が高まるのではないかという懸念がありました。
ワシントン条約に上記の8種を含めることができれば、国際的な取引を抑制し種の保存に繋げることができます。
まとめ
以上、サイテスの規制内容についてご紹介しました。
万が一密輸が疑われる生体・加工品を発見した場合、電話かインターネットで税関に通報することが可能です。情報提供はこちらからどうぞ。
飼育者が知識をつけ流通を監視することこそが、横行する密輸を防ぐ一番の方法です。
まずは興味のある種だけでもOKですので、サイテスの指定生物の一覧をチェックしてみてください。